「現代の奴隷制」を問う、Art Hack Day〈PROVINCE_EXPOSE〉

11月13日から15日にかけてアメリカのプロビデンス行われたハッキングイベント〈PROVINCE_EXPOSE〉、テーマは「現代の奴隷制」。

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04 december 2014, 6:00pm

私たちを支配する「主人」の正体

11月13日から15日にかけてアメリカのプロビデンス行われたハッキングイベント〈PROVINCE_EXPOSE〉、テーマは「現代の奴隷制」だ。「なんて前近代的な」と思うかもしれないが、私たちは奴隷でしかない、それが彼らの認識だ。主人は一体誰なのか?

(1)スマートフォン
—〈Phantom Dings〉
制作:Faith Holland/ Nadav Assor

ギャラリー内で人がセンサーに触れると室内に隠されたスピーカーからスマートフォンの着信音が出る仕組みになっている。スマホの音につい反応してしまうというパブロフの犬効果を見せた作品。最近、実際には携帯電話が振動していないのに振動したように錯覚する「ファントム・ヴァイブレーション・シンドローム」という症状も確認されている。携帯電話に過敏になっている証拠だろう。

—〈Guider〉
制作:
Kawandeep Virdee

スマホのGPS機能を使ってプログラムされた道順を辿らせるようにガイドするアプリ。アプリを起動させると音量を上げるよう指示される。次に画面が表示され、矢印が指し示す方向に向かって進んで指示される。指示通り動くと携帯が不気味な機械音を鳴らし出す。携帯を盲信しすぎている私たちをバカにした作品だ。

(2)機械、ソフトウェア
—〈Plotter Jesus Unkowingly Draws Itself〉
制作:Carl Lostritto/ Linyi Dai/ Chen Sun/ Shou Jie Eng

'Plotter Jesus Unknowingly Draws Itself,'
courtesy of the artists.

図式を描くためのプロッターに自らの“ポートレイト”を何度も書かせた作品。制作者のLostrittoは、これまでも人間と機械がどう違うのかということを模索してきたが、どんどん人間に近づいていく機械に“自画像”を書かせることで、行動は類似していても人間と機械の様相は全く異なるということを示した。

—〈You Cannot Go Back〉
制作:Minkyoung Kim/
Barron Webster

制作者のKimとWebsterはこれを「アンチPhotoshop」と呼んでいる。

ギャラリーに訪れた人はジョイスティックを使って絵を描くことが出来る。その絵は5秒ごとにプリントされるのだが、コントローラーは上下方向にしか動かず、また取り消しも出来ないため、どうしようもない絵がとめどなく流れ出るのだ。

「どうにかコントロールして上手く描こうとか、文字を書こうとかするけど、上下方向にしか書けないという操作の制限と時間の制限があるから、だいたいの絵が似通ってしまう。出てきた絵は、人間とシステムの攻防の跡みたいなものだよ。」

デジタルでのあらゆるビジュアル制作を馬鹿にしたようなプロジェクトだ。

(3)インターネット
—〈パノプティコミカル〉
制作:David Braun

'Panopticomical,' courtesy of the artist.

ギャラリーの片隅に投影されたプロジェクションマッピング。訪問者はある一定の位置に行かないと全容が見えないようになっている。そこに立つと無限の世界が広がっているように見えるが、同じようなアイコンがいくつも浮遊していて邪魔くさい。

アートハックデイ主催者の一人、Olf Matheはこの作品についてこう述べる。「ネットに入るためには限られた窓を通らなきゃいけないでしょ?いくつもの見方は提示されない。本来であれば、それこそインターネットの目的だったのにね。」

18世紀にジェレミー・ベンサムが、当時の刑務所の劣悪な環境を改善しようと構想した一元化管理システム〈パノプティコン〉。恒常的な管理下に置くことで、囚人たちに一定の「自由」を与えようとした。運営側も楽に大勢の人間を管理することが出来るようになり効率的だ。

これが「自由」な現在の社会の姿か?

ー〈Invisible Poems(看不清楚)〉
制作:匿名

'Invisible Poems' courtesy of the artist.

中国のメカニカルタークがブラックリストに入っている単語を使って詩が生成している。メカニカルタークとは、手書きの文字を認識するといったコンピューターが苦手な単純仕事を人間が請け負う仕組みだ。先日アマゾンのターカーが待遇の低さを訴えたが、この作品は、人間の存在が見えない検閲の仕組みとコンピューターに働かされる人間の現実を示す、このイベントきっての良質な作品だった。

主催者Olof Mathéは次のように語っている。
「アートハックデイの源流はオンラインでのプロテストなんだ。例えばこの作品をウェブサイトで出し続けたら、より多くの人が訪れるようになる。そこに寄付や広告料が入れば彼らもより活動しやすくなる。そうすればサイトの訪問者は増えるだろうし、作品のメッセージもより多くの人に伝わっていく。検閲に抗うためのサイクルが、そこから生まれるはずだ」

すべての作品は紹介出来なかったが、興味のある方は〈PROVINCE_EXPOSE〉の公式サイトへ。

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