Who Are You?: ガブリエーレ・マイネッティさん(40歳) 映画監督

「とても秩序が感じられます。ローマは二重駐車、三重駐車も多く、こんなにきちんと車が停まっていませんよ」

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26 maj 2017, 11:02am

すれ違ったギャル二人組の会話が聞こえてきました。「ネギやめて悲しかったのは、浴衣着れなくなったことかなー」「だよねー」 ネギ? やめた? 浴衣? 考えた結果、こんな答えが出ました。〈ネギっ娘倶楽部というキャバクラに勤めていたが、辞めてしまったので、夏の浴衣フェスタに参加できなくなった〉当たってますでしょうか?

日々の生活の中で、私たちはたくさんの人たちとすれ違います。でもそんなすれ違った人たちの人生や生活を知る術なんて到底ありません。でも私も、あなたも、すれ違った人たちも、毎日を毎日過ごしています。これまでの毎日、そしてこれからの毎日。なにがあったのかな。なにが起るのかな。なにをしようとしているのかな。…気になりません?そんなすれ違った人たちにお話を聞いて参ります。

ガブリエーネ・マイネッティ(がぶりえーね まいねってぃ)さん(40歳): 映画監督

ボンジョルノ!!

ボンジョルノ(笑)。

前回の塚本監督に続き、今回も映画監督さんです。『映画秘宝』みたいになってきましたが、わざわざイタリアからありがとうございます。

どういたしまして。

日本は初めてですか?

2回目です。

日本の印象はどうでしょう? 嫌なこととかありませんでしたか?

ありません(笑)。すごく面白いですよ。

イタリアと比べて、どんなところが面白いのでしょう?

すごくたくさんあります(笑)。例えば車の走り方ですね。とても秩序が感じられます。ローマは二重駐車、三重駐車も多く、こんなにきちんと車が停まっていませんよ。

縦列駐車の練習、大変そうですね(笑)。

あと電車もキレイですし。あんなにキレイな座席は見たことありませんでした。イタリアは綿とか出てますよ。

なんか、ありがとうございます。さて、ガブリエーレ監督の映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(Lo chiamavano Jeeg Robot)、拝見させていただきました。でも、この映画を観るまで、『鋼鉄ジーグ』のことはすっかり忘れておりました。日本ではそんなに有名なアニメではないのですが、ガブリエーレさんはどのようにして『ジーグ』の存在を知ったのですか?

イタリアでもやっていたんです。『マジンガーZ』と『UFOロボ グレンダイザー』、そしてジーグが有名なんです。

永井豪フェスタですね(笑)。

はい(笑)。アニメとしては、マジンガーZが最もポピュラーなのかもしれませんが、未解決事件などを取り上げる有名なイタリアのテレビ番組で、『ジーグ』のテーマソングが使われているんです。だから、誰もがテーマソングは知っているんですよ。

ああ、『探偵ナイトスクープ』の「ハートスランプ二人ぼっち」みたいな感じですね。監督もジーグは観ていましたか?

最初に放映されたときは小さかったので観ていませんが、再放送でたっぷり味わいました。7、8歳のときですね。

グレンダイザーやマジンガーZは主人公がロボットに乗って操縦しますよね? でもジーグは変身系ですよね? 確か頭だけになるんじゃなかったっけ?

正解です(笑)。そして、そこがポイントなんです。マジンガーZとグレンダイザーは、人が乗って運転しますが、鋼鉄ジーグは主人公の司馬宙が変身して頭部になるんです。映画でジーグを選んだ理由は、ロボットの色合いが好きだというのと、主人公が頭部になって、卯月美和という女の子が投げたパーツと合体してロボットが完成するという設定が気に入ったからです。卯月美和の助けがなければ、ジーグは完成しないんです。

お詳しい(笑)。さすがに卯月美和は覚えてないですねえ。

マジンガーZやグレンダイザーの主人公は超人的な力を持っていません。この映画でも最初にヒロインであるアレッシアが、主人公エンツォに対し、「あなたはジーグじゃないの? 私がパーツを投げてあげるわよ」というセリフがあります。主人公の司馬宙は、もともと人を助けることに、あまり興味がないエゴイストなのですが、最終的に自分自身の持つ力の責任に目覚めるんです。

もうひとつ思い出しました! ジーグの頭、胴体、手、足がバラバラになってて、磁石でくっ付くおもちゃを持っていました!

私も持っていましたよ(笑)。すごく魅力的なおもちゃでしたね。

ガブリエーレさんのお友達もジーグとかグレンダイザーに夢中だったんですか?

そうですね。私たちの年代では、例えばすごく強靭な男がいたとします。そしたら、「スーパーマンみたいだ!」とか、「まるでバットマンじゃないか!」とはいわず、「マジンガーZみたいだ!」、「まるで鋼鉄ジーグじゃないか!」といってました(笑)。それほど人気があったんです。今はMARVELとかもあるので、状況は変わったかもしれませんが、自分の世代では皆がそういってました。

他の日本のアニメも有名でしたか?

はい。小学校から帰ると、夕食の時間まで『Bim Bum Bam』というキッズ番組をやっていて、そこで日本のアニメばかりが放送されていたんです。5歳頃から14歳くらいまで、学校から帰ったら速攻でテレビの前を陣取って、3〜4時間は観ていましたね。『北斗の拳』、『ベルサイユのばら』、『キャプテン翼』、『ルパン三世』、『キャッツアイ』とかとか。

日本と全く同じですね(笑)。でもそんなにテレビばかり観てたら、お父さん、お母さんは怒るでしょう? 私は怒られてました。

はい、そうですね(笑)。『北斗の拳』が大好きだったので、これだけは録画で我慢していました。お母さんに「録っといてー!」って(笑)。

永井豪フェスタといえば、「キューティーハニー」は知ってますか? ハニーフラッシュです。

私はマンガで読みました。

あら、それは残念! アニメでは、変身途中に全裸になるんですよ。それがもうたまらなくて、たまらなくて。でも乳首が無いんですよ。

(笑)。イタリアでは、「ルパン三世」でも峰不二子のエロティックな場面はカットされていました。次元が銃を撃つところもカットされてましたね。一気に敵が倒れている場面に切り替わるんです。

お国柄ですね。でも14歳くらいまで観ていたんですよね? 中2くらいかな? 日本では中学生くらいになってもアニメとかを観てると、オタクっぽく思われてしまうこともあります。

もちろんスポーツや他のこともやっていましたし、アニメはアニメで好きでした。私が特別な訳ではなく、同年代の人は皆同じようなことをいうと思いますよ。それに、ずっとアニメだけを観ていた訳ではありません。ホラー映画にもハマりました。

その頃から映像の世界に入りたいと考えていたんですか?

当時は考えていませんでしたが、「今、どうしてこの仕事をしているのだろう?」と振り返ってみると、小さい頃から映画とすごく良好な関係にあったんだな、と思います。日曜日に家族揃って、テレビで映画を観ていましたし。そんな温かい家族関係が映像の世界に入るきっかけにもなりましたね。

それにしてもガブリエーレさん、本当にカッチョイイですよね。セクシーダンディーイタリアン。

ありがとうございます(笑)。

まじ「LEON」ですよ! やっぱ小さい頃からモテました? エッチなことばかりしてたり。

いえいえ(笑)。でも、私の性教育は「魔法のスター マジカルエミ」でした(笑)。

またそこに戻りますか(笑)。マジカルエミで勉強したことは、どこで発揮したんですか? キャッツアイの三姉妹や、峰不二子みたいな彼女は、いましたか?

そんな簡単に見つかりませんよ(笑)。性教育はマジカルエミといいましたが、彼女は子供っぽいのに、ものすごく胸が大きいんですよ。でも髪の色とか洋服の着方とかがすごく子供的なので、興味は惹かれるけど、安心感がありましたね。反対にキャッツアイの三姉妹や、峰不二子となると、大人の雰囲気がありましたから、ちょっと近寄り難いような(笑)。あとは12歳頃になると、60年代、70年代のイタリア産の大人なセクシャルコメディも見始めていました。

『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』の主人公も、アダルトDVDをいつも観ていますよね? 何か意図するものがあったのでしょうか?

今作は、永井豪先生のトリビュートでもありますが、イタリアの作品だというアイデンティティもあります。例えば、『鋼鉄ジーグ』の登場人物と、この映画の登場人物の間に比例する部分があったり、ローマの郊外に住んでいる人たちの現実も描かれています。一緒に脚本を書いたニコラ・グアッリャノーネが、ソーシャルワーカーをやっていたときに、担当していた人が自殺してしまったらしいのですが、窓を締め切った部屋でポルノビデオに囲まれて生活していたそうです。それがヒントになりました。主人公の孤独を表現するため、ポルノビデオを極端な形で愛好するという設定にしたんです。

あの郊外の町はまだローマにあるんですか? かなり治安が悪そうな雰囲気でしたが。

今はもっと悪くなっているかもしれないですね。ローマのなかでも、頻繁に麻薬の取引が行われてるところなので、観光の際は、あまりひとりでは行かない方がいいと思いますよ。

いつ頃から映画監督になろうと思ったのですか?

18歳のときです。小さい頃から学校で演劇をやっていましたし、家でも「今夜サーカスをやります」なんてポスターをつくり、妹に手伝ってもらいながら、家族を巻き込んでいろいろ劇みたいなことをやっていたんです。ああ、そうだ…ミサまでやりましたね(笑)。ミサの儀式感が好きなんです。あとは、バッド・スペンサーが出演した『花と夕日とライフルと… 風来坊』(LO CHIAMAVANO TRINITA, 1970)という作品がすごく好きでして、映画に出てくる担架と同じものをつくって、自分の部屋で寝ていました(笑)。それで18歳のときに映画を仕事にしようと思い、まずは脚本を書きました。最初の脚本は映像化されていませんが。

どんな内容の脚本だったんですか?

『若い犯罪者たち』という題名です。タランティーノの『レザボア・ドッグス』(Reservoir Dogs, 1992)のような犯罪ものですよ(笑)。3人の犯罪者が、結局警察に囲まれてしまうという。それもローマ郊外の話です。

日本では、映画の道を志そうと思ったら、映画の専門学校に進学をしたりしますが、ガブリエーレさんはどんな道を辿ったのですか?

大学に行きました。そこでは映画批評を勉強しました。同時に19歳のときから、15年間俳優としてテレビや舞台でも活動していました。

ああ、俳優さんでもあるんですね! どうりでカッチョイイわけだ! 大学はイタリアですか?

はい。でもニューヨークにも留学しました。そこで実際にカメラに触ったり、写真の勉強もしました。作曲やアレンジメントもずっと勉強していたので、自分の映画の音楽は全部自分で手掛けています。

わー、多才ですね。それでいてイケメンだもんなぁ。ディーン・フジオカみたいですね。そして卒業してからはどうされたんですか? すぐに映画のお仕事ですか?

俳優活動が多かったです。

収入はあったのですか?

ヒットした映画にも出演していたので、まあまあお金は入っていました。22歳くらいのときに、「俺って結構お金持ちだな」と思っていたのですが、父親に「そりゃ、そうだろう。俺の家に住んでるんだからな」といわれました(笑)。24歳で家を出てから、大したお金を持っていないと気付きました(笑)。

『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』に、ご自身が出演するというのは考えていなかったのですか?

確かに映画監督が役者を演じることもありますが、今回は監督だけでなく、プロデューサー、音楽、編集も自分で手掛けているので、とても役者までやる余裕はありませんでした。

これが長編デビュー作ということですが、なぜ長編を撮ろうと思ったんですか?

いつかは長編を撮りたいと思っていましたが、時間がかかってしまいました。それはいくつかの理由があります。俳優として忙しかったというのもありますし、自分で原案をつくってもなかなかプロデューサーが見つからなかったというのもあります。結局、1年くらい探しても見つからなかったので、自分でつくることにしました。それから実際にお金を集めて、撮影するまでに6年掛かっています。

塚本スタイルですね! でもお金はどうやって集めたんですか? 塚本監督はお父さんの遺産を使ったといっていましたが…

これです。(拳銃を打つジェスチャーをする)

もう! お茶目さんなんだから(笑)!

まず最初に〈Rai Cinema〉というイタリアの国営放送局にお金を出していただけたので、脚本制作に取り掛かることが出来ました。それから文化庁がお金を出してくれました。以前、撮った『Tiger Boy』という作品がアカデミー賞のショートフィルムの候補になったりしていたので、ある程度映画の撮影能力があるということをアピールできたんです。それで民間からもお金も入るようになりました。

お金を集めている時点で、『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』のアイデアも先方に伝えていたんですか?

投資してくれる可能性がある相手は、信用させなくてはいけないのですが、基本的に原案と脚本は残しておきます。相手が面白そうだと思えば、脚本を読んでもらう場合もあります。イタリアの場合は、映画に投資をした場合、税額控除が受けられ、出した金額の40%は税額から控除されるので、自分の出した金額の60%しか、リスクにはならないという税制があるんです。だからそれが投資するひとつの助けにもなっているんです。

そしてジーグは公開され、数々の賞を受賞したんですよね?

うまくいくときも、うまくいかないときもありますが、今回はすごくうまくいきました。批評家からの評価も、観客からの評価も良かったことはとても嬉しいです。

最初から、「長編はジーグで行こう」と決めていたんですか?

いえ、決めていた訳ではありません。他の原案もいろいろ書いていました。最初は主人公が自分をスーパーヒーローだと思い込んでいて、何かのきっかけで本当にスーパーヒーローになってしまうという内容でした。実はグレンダイザーとかも考えていたんですよ。

グレンダイザーだったら、UFOつくらなきゃいけないから大変でしたね。

そうですね(笑)。

さて、映画の中ではテロの場面もあります。イタリアのみなさんにとって、日々の生活の中ではどのように捉えているのでしょうか?

やはり、実際にテロ事件があったので恐怖はあります。日本に来たとき、ゴミ箱がないので「どうしてゴミ箱がないの?」と尋ね、それがサリン事件の影響だと知りました。ヨーロッパにはゴミ箱がありますが、透明なプラスチックで出来ていて、中身が見えるようになっています。世界のどこでもテロへの恐怖はあると感じています。

ジーグの続編があるとしたら、テロに立ち向かう可能性はありますか?

その可能性は否定しません。主人公たちの「自分さえよければいい、他人はどうでもいい」というエゴイスティックな考え方は、ローマでは当たり前のことなんです。しかし、健全な社会を築いていきたいと思っている人々にとって、社会から孤立している主人公たちが他人のために戦ったから、この映画はウケたんじゃないかな? と思っています。

最後に夢を教えてください。キャッツアイみたいな三姉妹と、あんなことしたり、こんなことしたり…とかとか。

いえいえ(笑)。いい映画をつくり続けていくことです。

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