2016年1月8日早朝、ホアキン・グスマン、通称「エル・チャポ」が、メキシコ海軍の作戦により逮捕された。
エル・チャポは、シナロア州ロスモチスの隠れ家に、数名の護衛とともに潜伏していた。海軍が突入すると、彼は、地下の衣装部屋にある、鏡の裏に準備された隠し扉から、自堀りのトンネルを伝って下水路へ逃げ出した。
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その数時間後、下水路から這い出し、強奪した車両で町から逃げ出そうとしたところを逮捕された。援軍が駆けつけるまでのあいだ、エル・チャポは、近くのホテルに拘束されていた。
エル・チャポの潜伏先は、ラス・パルマス地区のヒキルパン通り1002番にあった。ロスモチスの中でも裕福なこの地区には、シナロア州現知事の母親も住んでいる。海軍の突入によりグスマンの護衛1人が死亡。部屋の床には血が広がっていた。
食べ物の包装やコーラの缶がキッチン中に転がっている。床にはブランケット、寝袋が無造作に広げられていた。
メキシコ海軍とエル・チャポ軍団の間で激しい銃撃戦が繰り広げられた。壁には、無数の弾痕がある。穴の大きさからすると、銃撃戦には、キャリバー50(重機関銃)、通常のアサルトライフル(自動小銃)が用いられたようだ。
上階のベッドには、メロドラマ『La Reina del Sur(南の女王)』のDVDが綺麗に並べられていた。主演はメキシコ人女優ケイト・デル・カスティーリョ。エル・チャポの自伝映画を制作しようと話を進めていた張本人で、ショーン・ペンとのインタビューを仲介したのも彼女だ。ただ、メキシコ当局は、現場になかった物品を置くなど、証拠を捏造し、過去に告訴されたことがある。
地下の衣装部屋にあった鏡。銃撃から逃れようと、エル・チャポは、鏡の裏にある隠し扉を通り抜け、逃亡した。
鏡の裏にある階段を降りると、下水路に繋がるトンネルが掘られていた。2014年、クリアカンで海軍の追跡から逃れるのに使われたトンネルと同じような設計だった。
エル・チャポは、アメリカへの麻薬密輸、刑務所からの脱獄、何かとトンネルを利用するので有名。
ロスモチス郊外のアジトから6キロほど離れた工業地帯にある、ドライブイン型のラブホテル「ドゥセ」。逮捕後、連邦政府が援軍を待つ間、チャポ・グスマンはここで匿われていた。そのあいだ、野次馬たちがホテルの外観を撮影していた。
エル・チャポは拘留されたあと、手錠をかけられたまま、ドゥセのベッドの縁に座っていた。下水路を通ったせいか、彼の下着は汚れていた。