ある男性は、医療機関にかかるまで2年もの間、肛門からの射精が続いていた。それは研究者をも驚かせ困惑させる、稀な症例だった。
2021年8月、症例報告を共有するプラットフォーム〈Cureus Journal of Medical Science〉に掲載された〈A Curious Case of Rectal Ejaculation(肛門射精の興味深い一症例)〉と名付けられたテキサス大学医学部ガルベストン校のチームの研究報告によると、患者は5日間続いた睾丸の痛みで来院したというが、彼は2年もの間、大量の精液が肛門から漏れ出すという症状も抱えていた。
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患者は33歳の男性。CTスキャンで彼の骨盤付近を検査した医師は、直腸尿道瘻という、直腸と下部尿路をつなぐ瘻孔ができる稀な症状を発見した。直腸尿道瘻が形成されると、尿管から大便が排出されたり、逆に直腸から尿が排出されたりする。この男性患者の場合は精液の新しい排出経路ができあがっており、それにより精液が本来の経路であるペニスからではなく、肛門から漏れ出すようになっていたわけだ。
このような瘻孔は、外傷、慢性尿路感染症、外科手術、がんなどによって生じることが多い。この患者は、ちょうどこの症状に悩まされるようになった2年前にコカインとフェンシクリジン(PCP)のオーバードーズの治療のため長期入院をし、昏睡状態に陥っていた。今回の報告をした研究者たちは、そのさいに尿道カテーテルが誤って挿入されたことで尿路に外傷を与え、瘻孔が形成されたのでは、という仮説を立てている。
結局、医師により直腸尿道瘻を塞ぐ手術が行われ、患者は全快したそうだ。本症例はカテーテルによって起こる合併症としては大変珍しいものではあるが、研究者たちは「同時に、危険度が低いと思われている治療法を導入するさいも、医療提供者は細心の注意を払う必要がある」と主張している。万一、肛門から精液が漏れ出てきたら、2年も我慢せず、一刻も早く医師に診てもらおう。