モスル奪還への道 ① 丘上からISを狙うペシュメルガ

モスル(またはモースル。英語: Mosūl, アラビア語: موصل‎ )は、バクダットからおよそ400キロ北西に位置するイラク第二の都市。ニナワ州の州都で、人口は約175万人。人古代ニネヴェの遺跡と世界有数の石油生産で知られ、住民のほとんどはアラブ人であるが、周囲の地域はクルド人地域になる。そのためこの一帯はクルド人も古くから多く住み、民族的・政治的に様々な問題を抱えてきた。そして2014年6月9日、ダウラ・アルイスラミーヤ(通称イスラム国、以下IS)が、政府施設や警察署などを攻撃し、モスルを掌握。シャリーアに基づく新たな行政を開始し、現在もモスルは、ISが占拠している。

モスルは石油埋蔵量が多く、その利権を狙うISと、イラク中央政府及びクルド自治政府は、武力抗争を続けてきた。2014年末からアメリカ、イギリス、そしてフランスなども、ISへの空爆、そしてイラクとクルドに武器援助を始めたが、これまで大きな成果は上げられなかった。

Videos by VICE

しかし、2016年3月25日、イラク政府はモスルの奪回作戦を開始したと発表。イラク合同作戦司令部の声明によると、軍は、ニナワ州での制圧作戦の第1段階に着手し、4村を取り戻した。4月8日には、アメリカのケリー国務長官が、「有志連合による空爆作戦でISは弱体化している」と強調した上で、「有志連合は今後、イラク軍と協力してISへの軍事的圧力を強化していく。特にモスルの奪還は、最も重要な優先事項だ」と述べた。しかし、ISにとってもモスルは主要拠点であり、今後も抵抗を続けるものとみられ、長期にわたる厳しい戦いが予想されている。果たして、モスルの奪還は成功するのだろうか。そして対抗するISの次なる手は。

モスル奪還への戦況をレポートしたシリーズ、パート1では、イラク北西部のシンジャルを取材。モスルとラッカ(シリア)を結ぶ供給ルートの中間に位置しているため、この街でもISとの武力抗争が長く続いている。シンジャルを制圧することは、モスル奪還への大きな足がかりとなるのだ。ほぼISに占拠されているシンジャルを取り戻そうと、ペシュメルガ(クルド自治政府軍事組織)の兵士たちは、土地のため、人々のために戦い続ける。

原題:ROAD TO MOSUL:PART 1(2015)