かつて、伝説的な天文学者であり大麻愛用者のカール・セーガンはいかに大麻が「セックスの歓びを高めるか」について雄弁に語った。「一方で感度をこの上なく高め、他方で極めて多様なイメージが私の眼前で展開し気を散らすことで、オーガズムを先送りにする」。学術誌『Journal of Cannabis Research』に発表された、イーストカロライナ大学とノースカロライナ州立大学の研究チームによる新しい論文によると、そのセーガンの印象はあながち間違っていなかったようだ。
科学者たちは長年にわたり、ハイになることがベッドのなかでのパフォーマンスにいかに影響するかを研究してきた。1984年の調査では、対象者の3分の2が、大麻が関わるときのセックスはより質が高いと答えている。2019年の研究では、セックスの前にハイになっておくとセックスが良くなる場合もあるが、悪くなる場合もあることがわかっている。また、大麻の使用は性欲を増加させるため、より良いオーガズムへと導かれる可能性も高まると明らかにした研究もある。しかし大麻の催淫効果についての研究は多くない。その原因のひとつとしては、大麻がいまだに違法とされる国で、大麻を対象とした研究で資金援助を受けることが困難であることが挙げられる。
Videos by VICE
今回の新たな研究では、18歳から85歳の811名を対象に、セックスと大麻の習慣についての実態を調査した。参加者のうち女性と自認するのは64%、そしてモノガミー(一夫一婦制)の関係にあるのが73%。参加者の半数以上が大麻を毎日使用しており、59%がセックスの質を上げるためハイになるようにしていると答えた。大麻の使用形態でいちばん多いのは煙の吸引だが、エディブル(食用)、オイル、トピカル(経皮吸収)を好むひとも少数いる。
本調査の参加者の70%以上が、性欲やオーガズムの激しさが高まったと答えており、自慰の前に大麻を使うと答えた参加者の多くが、ひとりエッチにおいて快感が増幅されたと述べている。オーガズムの激しさにおいて顕著な男女差は見られないが、調査で得られたデータは、大麻により40%以上の女性が複数回のオーガズムを得られたと示している。
興味深いことに、大多数の参加者が大麻は味覚や触覚を敏感にすると述べているが、聴覚や嗅覚が研ぎ澄まされると答えているひとは多くない。
「全体として、大麻の使用はジェンダーや年齢にかかわらず、知覚される性機能や満足感にポジティブな影響を与える傾向がある。大麻は性的快感のジェンダーによる差異を減らす可能性がある」と研究者は述べている。
しかしこの調査にも限界がある。論文の著者が指摘しているように、今回の参加者の大多数が大卒の白人女性であり、その多くが経験豊富な大麻使用者だ。また、参加者の約4分の1がLGBTQIA+と自認しているが、本論文や結果においては男女を二元的に表現している。今回の調査で得られた結果は、参加者の自己申告による性生活への印象やそれぞれが好む大麻の使用方法に基づいており、研究室で緊張や使用量、身体的影響を測定したわけではない。また、参加者と参加者以外の性生活との比較もしていない。
セックスの前に大麻を使用するようにしていると答えたひとびとは使用していないひとたちに比べて高い満足感を感じているが、論文の筆者はそれを自己成就的予言、すなわち大麻がセックスの質を上げると信じることでリラックスして、あるいは自信がついたことでより良いセックスになっている可能性があると指摘する。「実際に生理学的な効果が出ているというよりも、大麻には催淫効果があり、それを使うことで快感が高まると考えることで生じている効果かもしれない」「しかし、性機能や満足感の増加に寄与しているであろう性欲の増加、阻害要因の減少に、大麻のリラックス効果が寄与している可能性はある」