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ボリビアのコカイン・バル

「ルート36」はボリビアのラパスにある仮設のラウンジバーで、カクテルと一緒に、グラム単位でコカインを銀の皿にのせて出している。誰もがこの店を知っているのに、なぜ店の営業を続けることができるのか。何かしら表沙汰にできない理由でもあるのかも知れない。

by Mattha Busby
20 February 2016, 2:35pm

南アメリカを旅行していたら、「ルート36」に関する噂をあちこちで耳にした。コカインを鼻から吸い込むのが大好きな輩によると、「ルート36」はバックパッカーなら誰でも通る、マチュピチュに向かう道中にあるそうだ。

「ルート36」はボリビアのラパスにある仮設のラウンジバーで、カクテルと一緒に、グラム単位でコカインを銀の皿にのせて出している。誰もがこの店を知っているのに、なぜ店の営業を続けることができるのか。何かしら表沙汰にできない理由でもあるのかも知れない。

もちろん、店の噂は知っていても、場所を知らない人もいる。3人のタクシー運転手を当惑させたあと、やっとお目当ての案内人を見つけた。「『ルート36』までお願いできますか」とスペイン語で尋ね、15ボリビアーノ(約120円)を支払うと、運転手は「ルート36」に向けてハンドルを切った。障害物があったため迂回した以外、大した問題もなく到着した。

ラパスの中央広場では、ここ1~2週間、炭鉱労働者たちによる投資要求ストライキがあったため、警察機動隊が出動していた。7月下旬、私たちが到着する前日、人通りの多い道にダイナマイトが仕掛けられたことにより、労働者たちの目的は果たされた。ここ数年、こういった運動がボリビアでは頻発している。観光客がドラッグを楽しむ傍ら、数か月おきに抗議運動が起きていた。その目的は、兵士の労働条件向上から、障がい者の社会保障改善などさまざまだ。

障害物を避けてラパス郊外に出ると、運転手は、ボリビア産コカインの多くが東部コチャバンバとサンタクルスで生産されている、と説明してくれた。ボリビアには、2万3000ヘクタールものコカ・プランテーションがある。コロンビアの4万8000ヘクタール、ペルーの4万9800ヘクタールに次いで、世界第三位のコカ生産国だ。

バーの前でタクシーを降りると、目立たないように警備していたボリビア人の若者3人に押し込まれるようにして、高さ120cmほどしかない車庫の入り口のような場所から店内に入った。入場料として25ボリビアーノ(約435円)支払い、No.12056とNo.12057と記された紙切れを受け取った。中に入ると、感じのいいノルウェー人の男性に手招きされた。

彼、ジョセフィンは街でコカインを探していたところ、タクシーに乗せられこのバーに着いたそうだ。

彼は、「カイピリーニャを二つ」と近づいてきた疲れ切った顔の女性に注文した。

「あとコカイン1グラムですね」。ジョセフィンの注文を遮るように、彼女はこう尋ねた。

カクテルに50ボリビアーノ(約870円)、コカインに150ボリビアーノ(約2610円)支払うと、すぐに注文の品が運ばれてきた。

このバーは、トイレでこっそりと取引が行われるような場所ではない。堂々とコカインをす販売する店だ。「ルート36」は、住民から苦情がきたらすぐに場所を変える。他のお客の話では、この場所に店が移転して数週間が過ぎたらしい。

バーには20人ほどの客がいた。同席していたのはギャップ・イヤー中のイギリスの若者8人、先ほどのノルウェー人の男性。反対側の席では、アイルランドのビジネスマン6人がハイになっていた。さらに女性の店員が2人、オーナーの女性に、ひどいダブステップばかりかけるDJ、店内を見回るガードマンが2人いた。

コカの葉を掲げるボリビアのエボ・モラレス大統領

コカインの原料となるコカの葉は、2015年7月にローマ法王がラパスを訪れ、コカのお茶を飲み、話題になった。アンデスでコカは、聖なる植物、と考えられ、エボ・モラレス大統領もコカが有する薬としての効能、栄養価を高く評価している。また、彼は、アンデスの文化におけるコカの重要性も主張している。アンデスに住む人々は、数千年前から、高山病の症状を和らげるためにコカの葉を噛む習慣がある。彼らがコカを使用する目的は、上司と4時間にわたってワークフローの改善について話し合わなければならないホームパーティーでストレスを解消するためではない。

モラレス大統領が前政権の政策を終わらせたのは、コカの文化的価値を重んじたためだった。以前、ボリビア政府は、アメリカの「麻薬との戦い」の一環として、コカ畑を殲滅しようとしていた。また、アメリカの麻薬取締局は、コカ畑をひとつ壊すたびに、農家に約18万円を支払っていた。大統領は、このような政策を文化的帝国主義だ、と断言し、アメリカでコカイン需要が増加していようが、古来の伝統を奪うべきではないと主張した。

2006年の当選し、コカ栽培が合法化されて以来、大統領は、コカはコカインではない、と繰り返し強調しており、国連に、コカを違法麻薬のリストから削除するよう要求している。しかし、モラレス大統領の就任以降、ボリビアのコカイン輸出は着実に増え続けている。2013年から2014年の間だけでも、290トンから420トンに増加した。大統領が軽率にコカを合法化したことで、「ルート36」のようなバーが営業を続けられるのだ。

気持ちよく酔っ払うために、格式ばったあいさつや自己紹介はしなかった。クラックをふた口吸い、それを思い切り肺に入れると、私は急に饒舌になり、他の客と人生や旅行について語り合った。

隣に座っていた2人のイギリス人、ハミシュとジョシュは、メデリンでコカイン2グラムを買おうとしたところ、コロンビア人ギャングに10グラムを約11万円で売りつけられそうになったそうだ。「バー36」は彼らの体験とはかけ離れた、平和な店だった。

このバーでは値段交渉ができたので、ジョセフィンと私は、友達になった、ハミシュ、ジョシュ、とお金を出し合い、3グラム分の値段で4グラム購入した。すると突然、雰囲気はあるがシャバそうなスウェーデン人男性が私たちの隣に座り、コカインを配り始めた。彼は吸い方を知らなかったので、私は鼻から吸って見せた。ガードマンの目の前でつぶれるような男だったが、彼の存在自体が、この店には誰でも入ることができるということを証明していた。

午前5時、すっかりハイになった私は、延々とタバコをふかしながら、他のお客と会話を楽しむというより、一方的に話し続けていた。6時半を回ったころ、50代の女性がバーの店員の目を盗んで、マリファナはいらないか、と尋ねてきた。5グラムを80ボリビアーノ(約1410円)で購入したが、それはマリファナに見せかけたただの黒い葉っぱで、吸ったあと頭痛に悩まされた。その後、ハイになっておしゃべりが止まらなくなった7人の友人たちと、タクシーに乗って宿へ戻った。