妊娠 妊婦 女性 性行為
Photo: Apostolos Vamvouras via Unsplash

経験者が語る妊娠中の性生活のこと

「信じられないかもしれませんが、赤ちゃんを傷つけたり触れたりするのをいちばん怖がるのは父親なんです」

この記事はVICE Romaniaに掲載されたものです。

妊娠は体を一時的に、しかし思いも寄らない方法で変化させる、美しくも痛みに満ちた人生を変える体験といわれる。なかには胸が大きくなったり、生理がなかったり、セクシーな気分になったりという変化を楽しみ、そのメリットを享受するひともいる。しかし、妊娠中のセックスがどのようなものなのかはあまり耳にする機会がない。

社会はいまだに人口の約半分が性的な存在であることを──実際に身ごもっているにもかかわらず──受け入れていない。このタブーは非常に根強く、ブカレストの産婦人科医ラルーカ・エンチウ(Raluca Enciu)医師は、しばしば患者から恥ずかしそうに妊娠中に性行為をしてもいいのかと訊かれるという。

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その多くはセックスが痛みを伴う子宮の収縮や、さらには早産を引き起こすのではないかと心配している。「確かに性交やオーガズムの最中には、脳がオキシトシンと呼ばれる子宮の収縮を促すホルモンを分泌します」とエンチウ医師は説明する。「ですが、性行為中に分泌されるのは非常に少量なので、かすかな偽陣痛を引き起こす程度です」

挿入は早産や破水のリスクを高めるわけではない、と彼女はつけ加えた。精液にはプロスタグランジンと呼ばれる子宮収縮を誘発する物質が含まれるが、実際に誘発するのは非常に稀だという。これもよくある誤解のひとつだ。

患者たちは自らの不安だけでなく、パートナーの不安にも対処しなければならない。「信じられないかもしれませんが、赤ちゃんを傷つけたり触れたりするのをいちばん怖がるのは父親なんです」とエンチウ医師はシスジェンダーのカップルについて語った。「ですが、ペニスは膣管よりも奥に届くことはないので、そんなことはあり得ません」

つまり、妊娠経過さえ良好なら妊娠中にセックスをしても問題ない。ただし、挿入が悪影響を及ぼす場合がないわけではない。例えば子宮頸部が短すぎると、流産や早産のリスクが高まることがある。さらに双子か三つ子の場合や早産の経験がある場合も控えたほうがいい。

いずれにしろ、エンチウ医師のアドバイスは、かかりつけの婦人科医に隠し立てせずに相談し、性行為の安全性についてストレートに尋ねることだ。妊娠中のセックスにはメリットもたくさんある。免疫機能を向上させ、エンドルフィンを放出し、パートナーと親密な関係を保ちながら、妊娠しているひとと赤ちゃんの両方をリラックスさせることができる。

もちろん、妊娠は人それぞれだ。そこでVICEは5人の経験者に、感情面から実践的なことまで妊娠中の性生活について話を聞いた。

「夫はわたしを羽化中のイモムシみたいに扱った。誰がイモムシとセックスしたいと思う?」

7ヶ月の時点で、わたしの体はほとんど変化しておらず、「お尻とお腹のどっちが早く膨らむと思う?」なんて冗談ばかり言っていた。

当然だけど、最後の数ヶ月で後者がどんどん膨らんでいった。その頃は絶好調だった。毎日ヨガをしていたし、しょっちゅうおならが出ることも気にならなかった。数日おきにランニングまでしていた。セックスも最初のうちは平気だった。赤ちゃんはわたしの一部だから、普段通り過ごすことが自然に思えた。

けれど8ヶ月になると、体に変化が現れた。胸が膨らみ、乳首が大きく黒っぽくなり、お腹が膨らんで赤ちゃんの動きがよく見えるようになった。この体験は、たぶんパートナーにはわたし以上に奇妙に思えたのだと思う。

いろんなことが面倒になった。お腹のせいで自分の外陰部も見られなくなり、鏡がなければどんな状態かもわからなかった。疲れやすくなり、性欲も減退した。最後の数ヶ月はめったにセックスをしなくなり、体位も後ろからしかできなかった。

夫のわたしを見る目も変わり、わたしを羽化中のイモムシみたいに扱った。誰がイモムシとセックスしたいと思う? 彼はわたしのお腹に命が宿っていることに気を取られ、少し怖がっていたのだと思う。彼の気持ちはよく理解できた。わたし自身も早く身軽になりたかったから。

それでも正直に言えば、すごくムラムラすることもあった。でも「いろんな体位で夫をファックしたい」というより「さっさと終わらせよう、この体の緊張感から自由になりたい」という気持ちのほうが強かった。──アンドレア(Andreea)36歳 デザイナー

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「普段からこれくらい性欲があれば、わたしたちの生活はもっとよくなると思う」

5ヶ月目までは普段通りセックスをしていて、最後にしたのは7ヶ月ごろだった。その頃は性器の血流が強まったせいでどうしようもなくムラムラしていた。だからセックスができないとなれば、マスターベーションかポルノを選ぶしかない。普段からこれくらい性欲があれば、わたしたちの生活はもっとよくなると思う。

体位に関しては、あまり柔軟に動けないので選択肢は限られ、慣れていなければ違和感があるかもしれない。わたしたちの場合は、セックスをいつどれくらいの時間をかけてするかを決めるのはわたしだった。パートナーを導き、できるだけわかりやすく自分の要望を伝えることが重要だと思う。──クリスティーナ(Cristina)36歳 顧客サービスエージェント

「母なる自然の女神になった気分で、家じゅうを裸で歩き回っていた。本当にセクシーな気分だった」

わたしには9歳と7歳の娘がいる。ふたりとも健康でわたしも特に制限がなかったので、どちらを妊娠しているときも気分は落ち着いていた、だから最初からセックスをしても問題ないと思っていた。わたしは臨月までずっと性的に活発な生活を送っていたし、陣痛が起こる数日前までセックスしていたという友だちも何人かいる。

性欲に関しては1回目と2回目でかなり違った。最初のときは常にムラムラしていて、自分の新しい体型も気に入っていた。母なる自然の女神になった気分で、家じゅうを裸で歩き回っていた。本当にセクシーな気分だった。ふたりめのときはホルモンか疲労の蓄積のせいかはわからないけれど、セックスのことはほとんど頭に浮かばなかった。自分の体は好きだったけれど、1回目ほど妊娠をすばらしいとは思わなかった。

妊娠中のセックスは、適切なパートナーさえいればまったく新しいセックスが体験できる。実験的で、愛と性的なエネルギーで満たしてくれるから。──ベリーナ(Belina)33歳 フィットネスインストラクター

「妊娠後には性欲が低下し、出産後の1年は完全になくなってしまった」

妊娠5ヶ月目に子宮頸管が開いてしまったので、手術を受けて縛らなければならなかった。その結果、セックスは控えたほうがいいと医者から注意された。どちらにしろ、心配だったからするつもりはなかった。妊娠後には性欲が低下し、出産後の1年間は完全になくなってしまった。

それは出産のプロセス、ホルモン、疲れ、回復のせいもあったけれど、愛情を求める気持ちが赤ちゃんで完全に満たされていたからでもある。それは特に悪いことではなかった。幸い、しばらくすると性欲は完全に元に戻った。──ラウラ(Laura)34歳 ジャーナリスト

「彼はすごく興奮していたけど、わたしはそこまででもなかった」

最初の検査で胎児のすぐ横に血腫があるといわれたので、最初の2ヶ月間はセックスのことはまったく考えなかった。

幸いにも、2ヶ月が過ぎたら体調さえ良ければ定期的にセックスをしていいと産婦人科医から許可が下りた。当時のパートナーとわたしは、子どもができる前はお互いのことをよく知らなかった。9ヶ月のあいだに、お互いのダメなところを嫌というほど思い知った。

彼が射精するのがあまりにも早すぎたので、これ以上セックスする意味がわからなくなった。彼はすごく興奮していたけど、わたしはそこまででもなかった。7ヶ月目には腰痛のせいでセックスできなくなった。

幸いなことに、出産するとすぐに性欲が戻ってきたので、セックスを再開できる日を心待ちにしている。──アンドラ(Andra)34歳 陶芸家