手が長かったり、首が太かったり、筋肉質であったり、背が高かったりと先天的な身体能力により体型や容姿が決定されている部分はある。同時に食生活や生活環境によっても変化が生まれることも確かである。努力と根性。今や死語のような精神的美徳も、それによって、社会的な地位や報酬の差異に繋がるとともに、容姿までを左右する大きな一因として挙げられる。
ブレイクダンサーの肉体は先天的な特質とともに、オリジナルの技を繰り出すために独自の肉体が造り上げられている。
そもそも、ブレイクダンサー=Bボーイと呼ばれたのはヒップホップの誕生創世記、1970年代前半まで遡る。アフリカ・バンバータが定義付けたとされるヒップホップの4大要素「ラップ」「DJ」「グラフィティー」「ブレイクダンス」。そのなかでも、ブレイクダンスの名称は、曲のリズム・セクションのみを指すブレイクと呼ばれるパートが起源となる。フロアにダンサーが集まり最も盛り上がるのがブレイクだと確信したDJ、クールハーク(Kool Herc)がレコードの2枚使いによってブレイクをループさせる「メリーゴランド」と名付けられた技を開発する。このブレイクの時間にフロアで踊るダンサーを、ブレイクの頭文字をとって「Bボーイ」と呼ぶようになった。(ブロンクスの頭文字をとってという説もある。)
Videos by VICE
ブレイクダンスは、「トップロック」「フットワーク」「パワームーブ」「フリーズ」と大きく4つにカテゴライズされたトリックで成り立っている。
トップロックとは立ち技やステップの全般で、他のトリックに移る前のダンス的な動きとして多く使われる技。
フットワークとは床に手を着いた状態で下半身を回転させたり捻りながらステップを踏む技。
パワームーブとは回転技やアクロバティックな技を指す。ブレイクダンスを踊る側、観る側ともに最大の醍醐味と言える。
フリーズとはいわゆる決めポーズ。フットワークやパワームーブの締めくくりに片手倒立や三点倒立などで体の動きを止めるポージング。
大きくはこの4つのカテゴリーのなかで独自の技を開発し、さらには自由自在に組み合わせる。そんなパフォーマンスを競うバトルが近年盛り上がっている。
ここでは、現在のトップBボーイの鍛え抜かれた身体を写真家、名越啓介の視点を通して紹介したい。手のひらに刻まれた無数のマメ、肘や肩などの摩擦が激しい部分から生えてくる体毛、微動だにブレない体幹、肉厚な筋肉、バネのようにしなやかで従来の肉体の型を凌駕する柔軟性など。日々の鍛錬により型造られた唯一無二の肉体が、オリジナルのパフォーマンスを実現させる武器となる。
ここで紹介する12名のうち4名が出場するブレイクダンス世界一を決めるRed Bull BC One World Final 2016が12月3日愛知県体育館で開かれる。エクストリームな技のオンパレードになるであろうこの大会、チケットはすでに完売しているが、当日はRed Bullのホームページより生配信されるので是非ともご覧いただきたい。中高生の頃、映画『WILD STYLE』『フラッシュダンス』などに感化されたオッサン、ダンス甲子園でのLLブラザーズ、山本太郎議員を見て育った30代から40代の中年、もしくは学校の授業でヒップホップダンスを楽しむチビッコ、Netflixで公開されている『ゲットダウン』にハマっている若者。誰であれ、現在のトップを走るブレイクダンサーたちが繰り出す、オリンピックに出場する体操選手かのようなアクロバティックな技の連続を目にすれば、ヒップホップ創世記、80年代、90年代、日本への伝承を経て、2000年以降大きく変化したシーンに驚愕するだろう。
Red Bull BC One World Final2016
12月3日(土)19:30〜21:30
愛知県体育館
Red Bull BC One公式WEBサイトでは12月3日当日に生配信される。
redbullbcone.jp/